アウディTT、1万km乗ってみて

というわけで、今年の2月12日に納車されてから早1万2千kmほど乗ったので、この車の良し悪しも大分見えてきたかなというわけで、まとめてみた。比較の基準としてはCL7アコードユーロRがメインになってます。車歴が浅いので御免なさい。グレードはMY11の2.0TFSI、S-lineじゃない一番安いやつ。

  • 良いところ
    • フラットトルクなエンジン。

最高出力155kw(211PS)/4300-6000rpm、最大トルク350Nm/1600-4200rpmは必要にして十分。2速から思い切り踏み込むと、ホイルスピンしながら猛烈な加速を見せる。スタビリティコントロールのランプが明滅しながら背中を押し付けられるようなGを感じるのは面白い。どこで踏んでもパワーもといトルクがなくて困る、ということがないのは美点かと。前のi-VTECでもパワーには困らなかったが、トルクが足りないと感じる場面はわりとあったので、より一層この点が引き立つ。CL7のK20A(R)エンジンから比べると、最高出力は220psからの9psダウンだが、8000rpmという高回転域でしか発揮できないパワーなので、それを感じる瞬間はない。むしろ、最大トルクが206Nm/6000rpmから大きく上昇しているという点のほうが大きい(もっとも、K20Aも2000rpm近くで大体8割のトルクは出ている、ハズ)。

TTのトランスミッションはツインクラッチセミオートマ、DSG。前項の直噴ターボエンジンであるTSI(アウディだとTFSI)と組み合わされて、VWグループでのウリになっているポイント。TTに搭載されているのはわりと大容量のトルクにも耐える湿式6速。DSGは二つのクラッチのうち、常に片方は次の段速にてスタンバイされており、変速の際のラグがほとんどない。また、MTベースであるため、トルコンATやCVTのようなパワー損失はほとんどなく(MTのちょいオチくらい)、アクセルに対するダイレクト感も割と高い、というのが教科書的な説明。はっきり言って、TSI+DSGを味わうためにこの車を買ったと言っても過言ではない。やっぱり一応はトレンドだし。
DSGの良いところ、というのは要するにMTフィールなのにクラッチレス(=AT)というところにあるのだけど(メカ的には多分ロスの少なさだろうが)、確かにアクセル開度に応じた速度の反映というのは即座にわかるところであって、ドンッと踏めば、ドンッと車は前に出るあの感覚は確かにある。また、変則の速さも確かに逸品。奥歯にものが挟まった感じなのは、悪いところでもDSGを書かざるをえないから。ただ、家庭の事情やらなんやらでMTをおりないといけない人にとっては、DSGというのは一つの最適解ということは出来ると思う。

    • 高剛性ボディ

アウディTTはASF(アウディスペースフレーム)という、車体のうち約7割がアルミでできたボデイを持っている。このどっしりとした感覚は、走りだしてみれば明瞭であり、前車CL7も結構な剛性を誇ったと認識していたが、それすらもはるかに凌ぐレベルだ。また、CL7比で二倍はあるのではないかと思われる分厚いドアもあり、視覚的にも高剛性を実感できる。

    • 軽快なハンドリングと直進性の高さ

前述のASFによって、前後バランスもFFにしては良い方であり、総重量1340kgのうち、前軸820kg、後軸520kgであるから、重量配分は61:39である。これはハンドリングにも大きく影響していて、コーナーでの鼻先の軽さを実感することが非常に多い。また、ショートホイールベースと、全福1840mmのワイドトレッドも手伝って、コーナーでの安心感は非常に高い。にもかかわらず、非常に高い直進性には脱帽。CL7を超える安定感。

    • 燃費がいい

今のところ、生涯燃費は12.79km/l。カタログ燃費が13.2km/lであることを考えれば、上等な方。踏むと即悪化するけど、まあそれも愛嬌。

    • カッコいい

異論はあると思うがカッコいい。特にヘッドライト回り。テールランプのデザインはもうちょっとがんばろう、とは思いますが、全体的なフォルムは結構好き。前車のCL7はダサカッコいいだったので、キリッとした居住まいには所有の満足感があるので良い。帰宅して駐車スペースに止まっているTTを見るとニヤニヤしてしまうし(キモイ!)。

  • 悪いところ
    • 横に大きすぎるところ

流石に全幅1840mmはでかすぎる。クーペなので2ドアだが、またそのドアが異常に長く分厚い。乗り降りには気を使う。

    • 所詮は2ペダル

MT同等、いやむしろそれを凌ぐ効率を謳うDSGだが、結局のところMTのフィーリングには敵わない。MTは確かにクラッチを切ってつないで、シフトレバーをゲートの中でスコスコ動かして、という「無駄」があり、そのへんの動作を機械に任せているDSGには速度や効率の面で及ばない。しかしながら、その無駄の中にこそ一番大切なものが含まれているのだと僕は思っているし、今となっては痛切に感じている。

    • スピードに物語性がない

確かにTTは速い。この車はスピードが出る。ただ、その速度には物語がない。つまり、自分でクラッチを切ってつないで、エンジンを回して創りだすスピード、という体感に欠けている。AT率が異常に高い日本人にとってはそれでもいいのかもしれないが、僕はその点についてちょっと物足りなく感じている。少なくとも、僕は生活のために車に乗っているわけではなくて、意義のある時間を生み出すために車に乗っているのだから。ただ踏んだらインジケーターの段が3→4→5→6とポンポンと上がっていくだけではなく、自分の意志を介在させ具現化させた結果としての速度が欲しい。まあ、それは単に僕がDSGにいちゃもんをつけているだけなのだろう。

    • 音に刺激が足りない

ゴルフGTIは、DSGでシフトアップするたびに「ボッ」というオナラみたいな音をたてるのだが、TTはそれもない。日といって、エンジン音を車内へ積極的に入れるセッティングになっているわけでもなく。踏み込むとターボの野太い音が少しだけ響く。でももうちょっと何かあってもいいと思うんだけど。そのへんも、物語がないと思ってしまう所以か。

そんなこと言ったら、メーターフードだってプラスチックだろ!ということになるのだけれど、素グレードのハンドブレーキのプラスチックっぷりはちょっといただけないレベル。が、それでもCL7のプラスチックよりはよほど上等だけど。

とまぁ、色々書いてみたものの、気に入ってたり。こういうのもアリかなという感じで楽しんで乗れているので、今のところは最初の車検くらいまでは乗れそうだなと思っている。買おうかなと思っている人の参考になれば幸い。