「かわいい女」レイモンド・チャンドラー著・清水俊二訳/東京創元社

やっぱり清水俊二訳がしっくりくるなあ、という感想。まあいつものチャンドラー節です。
ハリウッドで脚本の仕事をやったあとに書かれた作品だけあって、映画界へのアイロニカルな言辞が目立つ。いつもと違う部分はどこかといわれればそこかなと思った。チャンドラー本人の個人的感情がこめられているようである意味で面白い。マーロウがハリウッドについての思い出を語る一節はよかった。ああいう懐古的な詩情はフィッツジェラルドをなぜか思い出した。雰囲気が全体的に女々しく感じられて、チャンドラーの愚痴的な小説のように感じた。面白いけど、愉快ではないという感じでした。
ミス・ゴンザレスはこの小説の中では一番いい女だったかと。いやまあ、メイヴィスもいいんだけれど。