「大いなる眠り」レイモンド・チャンドラー著・双葉十三郎訳/東京創元社

チャンドラーがダシール・ハメットを先駆とするハードボイルド小説の流れを引き継ぎ発表した処女長編、ってことになるわけですが、今まで読んできた他の三作品(長いお別れ/さらば愛しき女よ/かわいい女)よりもプロットは優れているように思えた。まあきっちり読み比べているわけじゃないので、これは印象論にすぎないです。ストーリーの運びはかなりきっちりとしていて、その辺は面白く読めました。
ただ、訳が……。いかんせん古すぎ。うふう、といきなり言い出すフィリップ・マーロウなんて見たくない。グーグルで調べたところによると原文では「Uh uh.」ということになっているらしいが、さすがにこれを「うふう」と訳すのはなあ……。江戸っ子が粋だねいなせだね(言い回し、正しいのだろうか)という訳者の感覚がハードボイルドをそう捉えただけなのだろうけれど。あと「さよう。拙者はすこぶるりこう者でござる」もありえない(ぐぐったらすでに言及されている方がいた)。清水俊二訳から入った人はみんなこう思うんだろうな。
訳が古いせいで入門篇として使うには少々難があるものの、ストーリーは面白いし、チャンドラー的(春樹的とも言う)な言い回しも楽しめるので悪くはなかったです。はい。