九州ドライブ1日目

4/29は失敗の連続だった。今更反省したところでなんにもならないのだが。
4/29未明は大渋滞が起こると予想し、それは昼過ぎにはおおよそ解消するのではないかという憶測を、僕は立てていた。というわけで、千葉県柏市を出発したのは13時少し前だった。いつものように県道8号に乗り、途中のガソリンスタンドで給油する。普段ならば混み合うはずの船取線も、今日は随分流れがよく、自然と上機嫌になった。旅のことを思うと、気分は弾む。花輪ICで京葉道に乗り込み、快調に飛ばす。急ぎすぎても渋滞に引っかかることは明白だったので、意図的に抑えるものの、順調に流れる首都高は否が応にも僕の気持ちを加速させた。しかし調布を過ぎたあたりで、高井戸から相模湖への渋滞が未だ解消されていないことを知ると一気に気分は萎えた。それでも、下道に降りて甲州街道をひた走った。高尾山口を過ぎた頃から、国道20号は渋滞を始め、ついには大垂水峠のあたりでピクリとも動かなくなった。30分ほどジリジリと動き、止まり、そしてまた動き出すことを繰り返していたが、埒があかない。仕方なく僕は引き返し、都道経由で津久井へ抜けることにした。そこから先をどうするのかという問題があったが、あまり深くは考えなかった。行ってみなければわからないのだ、どうせ。しばらく走ってR413三ヶ木交差点にたどり着き、道志みちを走るか否かを少しの間考えた。道志みちから河口湖畔を経由して、精進湖ブルーライン経由で中央道に復帰するシナリオ。これは九州に行くのでなければ、大変魅力的な道のりだった。ただし河口湖畔の渋滞が読みきれなかったこともあり、断念。迂回路にしては確実性に欠ける上に、距離が増えすぎる。仕方なく僕は直進し、R412からR20へと復帰するルートを選んだ。相模湖駅まではなんとか近づけたが、相模湖ICから上野原ICまではまだ渋滞があるようだった。R20大垂水峠越えを選んでいたら、ここにはどれくらいの時間にたどり着いたのだろうか。きっと遠回りをしたのかもしれないと思ったが、僕の人生はそういうものなのだから仕方が無いし、今更悔やんでも仕方がない。渋滞でイラついて精神をすり減らすよりはマシだろう、とポジティブに捉えることしかできない。相模湖ICで中央道には乗らず、上野原ICまでR20を走った。道は若干混んでいたが、進まないわけではなかった。上野原ICで中央道に乗ると、ETCゲートを通過すると同時に僕はアクセルを思い切り踏み込んだ。インジケーターでESPが作動しているのがわかり、背中がシートに押し付けられるような加速と共に車は前に進んでいく。速度に感応して、羽があがる。その時、17時30分をゆうに過ぎていた。
八ヶ岳PAについたとき、19時手前だった。中央道は混み合ってはいたものの、渋滞は少しもなかった。この時間でこれならば、名神の渋滞も無くなっているはずだった。つまり、この旅もどうにかこうにか軌道に乗ったということだ。僕はラーメンを申し訳程度に胃に納め、再び走りだした。岡谷JCTを過ぎ、恵那峡SAにたどり着いたのは20時30分。猛烈に眠い。しかし耐える。最近お気に入りのAQUOのブラックを頬張ると、そのまま走り続けた。毎度思うのだが、僕は普段は全くストイックでもなんでもないのに、車に乗っている時だけはありとあらゆる欲を抑えている。今回は、食欲と睡眠欲がそれだった。自分を痛めつけるかのように、その2つを最小限におさめるように行動した。
小牧JCTを過ぎ、名古屋に入る。一宮、羽島を過ぎて米原JCT。多賀SAについたとき、僕はふとかばんを開けてみた。このSAにはレストハウスがあり、欲情が併設されているのだ。それに入ろうと思い立ち、荷物からおふろセットを取り出そうとした。と、かばんを開けた瞬間になにかがおかしいことに気づく。注意深く荷物をまさぐってみると、何かヌメるような感触が指先に走る。そう言えば、何かフローラルな匂いが漂っている。嫌な予感とともに、僕は荷物をすべて取り出して、中身を検めた。おふろセットとしてこの手の旅行には持ち歩いていたボディーソープの蓋があいていた。そしてそれがかばんの中にぶちまけられていたのだ。とりあえずぶちまけられたボディーソープを、数年前にどこかのGSでもらったティッシュで拭きとり、ベトベトになったおふろセットを処分すると、全てが投げやりな気分になって、僕は再び車を走らせた。風呂のことなどどうでも良くなってしまった。西へ行こう。西へ、西へ、西へ。
名神高速をひた走り、吹田JCT中国自動車道へとスイッチする。頭はぼうっとして、全身の感覚も怪しい。もうだめだ。けれど、走る(いけません)。行けるところまで行っておかなければならない、という強迫観念に取りつかれ、僕はひたすらに西へと驀進した。日付が変わる頃、僕は意識が途切れる寸前であることをはっきりと認識し、自らにSOSを出した。そうして加西SAに滑りこむと、僕はそのまま眠った。酷使された意識は、すぐに眠りに落ちた。明日は九州だ、と溺れていく最中につぶやいた。
1日目 走行距離672.1km、燃費14.5km/l