2010年読んだ本で面白かったやつ

というわけでまとめてみる。買った本じゃないのは、=読んだ本にならないため。積みまくるのが僕の性さ。

「南部」という世界の中で、黒人少年が自分らしく生きていくということの困難さを追体験できる名作。パワーズの「われらが歌う時」とダブらせてみると、状況は変わっていないのだとわかる。この差別というものは、アメリカ南部という地域に特別なものではないということを想像してみる必要がある。そうしたとき、今自分が生きている社会の中に横たわっているものの一端を感じるとことができる、はず。

これは鉄板。アウシュビッツ終戦を迎えたユダヤ人化学者が、故郷に帰り着くまでを書いた自伝的作品。戦争というものが人間をどのように磨り減らしていったのか、そしてそこからどのようにして復活していくのか。その過程は、当事者にとっては戦争は少しも過去のものにならないのだということを物語る。だからこそ、戦争から(年代的に)遠くはなれてしまった我々には想像力が必要なのだ、とバッキングで強く語りかけられているような気分になる。

著者渾身の一冊。「虐殺器官」が楽しめなかった人もコレはいけるはず。

  • 「都会と犬ども」マリオ・バルガス=リョサ/新潮社

「世界終末戦争」と同時に再刊されたのは、昨年の出版における大ニュース(個人的には)なので、すぐに飛びついた。このすぐあとに出た「チボの狂宴」を読んでしまうとなるほど粗い部分がないでもないのだが、少年たちを変質させる「装置」としての士官学校、つまり変わることを強制する「社会」という問題性、そしてジャガーという一人の少年のポートレイトとして、素晴らしい青春小説(?)だった。「世界終末戦争」よりもこちらのほうが個人的には好きなので押してみる。点数はこっちのが下げてつけたな、まあその時の気分。