「死と歴史」フィリップ・アリエス/みすず書房

死と歴史―西欧中世から現代へ

死と歴史―西欧中世から現代へ

★★★★
千年以上前、ヨーロッパでは死というものは恐れるべきものではなかった。死は常に身近にあり、人々は自らの死を厳粛に受け入れていった。死ぬことになるという「運命」を受容していた。まさに「飼いならされた死」というべき姿だった。それがルネサンス期を経て、人生の挫折・審判の時と重なりあい、一切を失う恐れるべき瞬間となった。そうしてまた、近代、病院という権力の中で生を調整されるようになり、死は死にゆく者の手から取り上げられ、「死を意識せずに死ぬ」ことが求められるようになった。周囲の者のために、苦しまずに死んで見せることが重要となり、死に備わっていた厳かな一瞬はその人から奪われた。
(同時並行的に読んでいるけど全く読み終わる気配のない)「死を前にした人間」の抄訳版というと、出版年度順が異なるので若干誤解をまねくのだろうが、図解・事例で溢れて読み疲れてしまうくらいのそれに対し、本書は大変優しくそして読みやすい。