「告白」を見た

松たか子演じる森口の娘が、彼女の受け持つクラスの生徒に殺されたというあらすじは置いておく。そんなもんどこでも語られていることだから。で、少年法の壁に守られ、命に対しての感覚が麻痺している犯人の少年Aという、ある意味では無敵の存在に対し、権力も何も無い存在であるところの森口がどう立ち向かっていくのかという、僕の大好きな「絶対的なモノへの弱者からの一撃」を書いた話だったので、結構楽しめました。クラス全員の中に爆弾を投げ込み、その化学的反応によって犯人の心を追い詰めていこうとする過程で、弱者は常に溺死させられるような救いようのない教育現場の危機的状況が反映されており、思わず顔をしかめることは請け合い。しかし、そこに壮絶な悲しみと覚悟を持った大人によって貫かれる、凄惨にして残酷な復讐は爽快の一言。もっとも、木村佳乃演じる少年Bの母の態度のわざとらしさによって、観る者は復讐の罪悪感を軽減されてしまうところが、この感想を手伝っている。ここは原作ではどうなっているのか知らないが、彼女はもう少し良識を加えた存在であってもよかったようには思う。また、ラストの展開は本当に愉快痛快。自分の性格の悪さを実感した。
現代における少年法と、犯人と被害者(遺族)の心の壁という問題提起、というか掘り起こしはあるものの、森口の心情・態度が一貫しているおかげで、どうしても観る側はそちらに偏ってしまうため、エンタメ的な要素のほうを強く受け取った。ま、もう一度見たい!とは思わないが、楽しめる作品だった。救いもなければ、誰も幸せにもならないが。
北村美月を演じている橋本愛が大変可愛いのでそちらに注目するのも良いかと。