「1000の小説とバックベアード」佐藤友哉/新潮社

1000の小説とバックベアード (新潮文庫)

1000の小説とバックベアード (新潮文庫)

★★★
「子供たち怒る怒る怒る」というしょーもない本を読まされて悲しくなったのは、二年前だか三年前だか、定かではないが、たしかそれくらい前だった気がする。安易な絶望の表出がどうにも受け容れられなくて、本当に本当に嫌だったのは今でも覚えている(話の筋はほとんど忘れたけれど)。で、ある日の昼休みに、本書が丸の内丸善本店4階文庫コーナー並べられているのを見て、その記憶がオーバーラップしてきて、読んだらきっとむかついて壁にたたきつけちゃうんだろうなぁ、嫌だなぁ、などと思いつつも、一度心の端に引っ掛けてしまった以上は気になって仕方がないという症状を発してしまったので、翌日に438円(税抜き)の本書を購入した次第。
読んでみると意外と良かった、というのが素直な感想。紀伊國屋書店のあたりまでは三星半くらいかな、という感じだったのだけれど、オチがどうもしっくりこないのでこの評価。この人にしては本当に真面目に、自分のことを書いたんだなという感じがして、いつもは臭いくらいに漂っている薄ぺらい嘘っぽさがあんまり感じられなかったのが、多分僕にとっては良かったんだろうという気はするけれど、よくわからない。いろんな所からすこしずつパクって、なおかつオタク方面もさりげない感じが嫌らしいな、相変わらず。
作中に出てくる、特定のひとのために書かれる「片説」なるものはラノベみたいだなと思ったけれども、僕はラノベを読んだことがほとんどないので、妄想に過ぎなかった。