「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」フィッツジェラルド/角川書店

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

★★
個人的な話で恐縮だが、角川の海外翻訳モノを読んで良かったなという思い出が少ない。企画がどうにも良くないのか、訳者がよくなかったりするのか(オースターの「シティ・オブ・グラス」はこれ)、まあそんな感じなのだろうけれど、今回もそんな一冊。
フィッツジェラルドというと、最近では「夜はやさし」が新訳で出たり、村上春樹が「グレート・ギャツビー」を訳したり、とわりと話題性はある作家ではあると思うが、有名な長編以外を読もうと思うと、結構選択肢がない。村上春樹が編んだフィッツジェラルド本は本当に面白いが、まあそれくらいか。
翻って本書は、ハリウッド時代に書かれた小説や、彼の処女作である表題作を収録しているものの、はっきり言って面白くない。冴えたところがあまりない。翻訳の味わいもそんなにないので、個人的には良くなかった、と言わざるをえないのがつらいところだが、「最後の美女」だけは光っていたと付け加えておこう。「氷の宮殿」のような、南部モノだと言えば大体の雰囲気はわかるだろうか。ただ、これが読みたいがために本書を買う価値があるのかというと疑問ではある。