「放浪息子」(7) 志村貴子/エンターブレイン

放浪息子 (7) (BEAM COMIX)

放浪息子 (7) (BEAM COMIX)

安那ちゃんファンクラブ会員のわたくしめとしましては、この7巻だけでどんぶり10杯食えます。買ってから一日五回は読み返してるけれど、本当に安那ちゃん可愛い……(きめぇ)。
今更気づいたんで言うのもはばかられますが、志村貴子という漫画家は「表情で伝える」ことができるんだなあと。前からその表現方法は使ってた気はするけれども、表情での表現が特に豊かになったなと感じた。よしのとさおりんのやり取りの中で、モノローグや台詞を使わずに顔で喋らせるコマが何度も出てくるが、ここ本当に素晴らしい。言葉はそこにないのに、コマの中の表情から浮かび上がってくる。言葉がないおかげで、心情の変化がくっきりと伝わってくる。「敷居の住人」であれば、台詞のないコマは間を取るコマとしての使い方が主だったのに対し、「放浪息子」では感情を表すことに使われている。この進化に気づいたとき、思わず「すげえ」と言ってしまったくらい。
台詞ナシのコマというのを多用する書き手というのは結構多いけれども、結局それが単なる行間になってしまっていて、表現の「技法」になっちゃってるものが多い。でも表現媒体としてのマンガはその擬似的な行間という表現に安住せず、視覚的表現が可能であるがゆえに原始的な訴求としての台詞ナシのコマを成立させられるはずで、それができてるなあと感じた。あと、表情の多様さもミソかと。
あと、髪の毛のベタが何気にすごい。安那やよしの、さおりの前髪など、ベタだけであそこまで細やかな質感って出るんだなと感心してしまった(そういう漫画は山ほどあるのかもしれないけれど、意識したことがなかった)。まこちんのコンプレックスや、よしのとさおりのデタントなど話の筋としても一級品の展開を見せていて、ますます眼が離せないので、ぜひ読むべし。
しかしなあ、「敷居の住人」の経験から行くと安那ちゃんとシュウは上手くいかない気がするんだよなあ。そしてまた出番が減ってしまうというオタ悲喜交々な展開になるんだろうな……。