東北ドライブ3日目

朝起きて飯を食って即出発! というわけで、午前八時頃にはもう国道へ出て、仙台方面へと走り出していた。天気はあんまりよろしくなく、あんまり気乗りのしない一日だった。それでも鳴子温泉郷からR47を経由して古川へ出ると、R4にスイッチしてそのまま仙台まで南下。仙台は通過しただけだったので、震災の被害が大きいところは見ていないのだが、R4に限った話をすれば、道がかなり歪んでいた。走っているとそのうねりを身体でもって如実に感じ、ため息が出てしまったのを今でも覚えている。こんなんじゃなかったよなあ、と思ったのだ。
高速に乗る気にもなれず、福島県までそのまま南下する。どんよりとした空は福島市のあたりになると"そこそこ"晴れて見えたのだが、磐梯山の方は分厚い雲がかかっていた。それでも、絶賛無料開放中の磐梯吾妻スカイラインを走らねばなるまいて、ということで鼻先を向ける。

料金所にたどり着いても予想通りの空で、今回は道を楽しむだけにしようということになった。
しかし、とろくさい車がヘッドライトもフォグもつけずにだらだらと山を上がっていくものだからフラストレーションは溜まる一方。とは言え、こんなに霧が深いとさすがに慎重にもなるよなあというのはよく理解できる。

浄土平もこんな天気で、しかも人だけはむちゃくちゃいたので、うんざりして速攻で山を降りる。二本松へ抜けるつもりが結局福島市に来てしまったので、福島松川ICから高速に乗る。
郡山ICで磐越道にスイッチしてあぶくま高原を横断する。いわきまでの道のりはいつもと何ら変わらないようなのどかさをたたえていたが、実際はそうではないのだろう。ふと思いついて、いわきJCTで左折する。つまり、原発のほうを目指した。
常磐道は広野ICで通行止めになっている。つまり、実質的にはいわき中央IC以北を走っている車というのは、地元の方々か、そういう用事の車がほとんどということになる。実際、北へ上がっていく間、同じ方向へ向かう車は2台しかいなかった。随分とのんびり走ったのに、追いついてきたのは一台だし、追いつけたのも一台きりだ。対してすれ違った車というのは、何らかの作業のための車両や、いわきナンバーの車であったりして(きっと買い出しなんだろう)、自分のような車は異質でしかなく、肩身が狭いと言うか視線が痛いと言うか、とにかく恥ずかしくて仕方がなかったし、物見根性で来るものではないなと後悔した。

そして通行止めのところまでやってきた。

広野ICを降りるとすぐにJヴィレッジがあるのだが、怖くて行かなかった。というかもう、そこまで厚かましくなれず、そのままR6を下って帰った。
広野付近のR6沿いには人がいなかった。セブンイレブンもガソリンスタンドもKEEPOUTにしてあり、あとは朽ちるがまま、という状況だった。国道沿いののどかな風景の中におぞましい出来事の傷跡が明らかに残っていて怖気の立つような思いがした。明るく開け放たれた部屋は見る者に良い印象を与えるものなのかも知れない。だが、それがなぜ明るいのか、開け放たれているのか、を理解している場合、印象は当然ながら理由によって大きく左右される。原発の救いきれないほどの爪あとの一つだということを知っている僕は、こののどかさには狂気のようなものを感じて仕方がなかった。気持ち悪くて仕方がなかった。恐ろしくて仕方がなかった。だからしばらく走ったあとで、歩道をてくてくあるいているおじさんを見かけた時、ほっとするよりも先に何故どうしてと思い、次に怖いと思ってしまったのだった。一つ手前のいわき四倉ICまで走ると、ICの付近には農作業をしている人々がいて、その時僕はようやく内心ほっとしたのだった。
その後は常磐道を使って南下して帰宅。非常に疲れた。そして頭が痛くなった。
走行距離579.5km 15.3km/l