大手町の眠れない夜

地震で電車が止まり、車も動かないような状況だったので、会社で夜を明かすことになった。ネットとソリティアで時間を潰し、カップ麺をすすったが、どうにも味気なく疲れ、あらゆることが面倒くさくなってくる。会社の入っているビルは絶対安全だということで、火が落ちてから動くのもリスクが高いので、仕方がなくとどまったが、これなら結局神楽坂に行ったほうがマシだったのかもしれないと思いつつ、結局睡魔には勝てず、会議室の床にコートを引いて、会社四季報10夏版を枕にして寝ることにした。消えるのことのない外灯は、窓の外で煌々ときらめいて、空調の風でブラインドが揺れる音が、薄暗い会議室の中で響いた。二度、三度と寝返りをうつ。眠れない。悶々とする。輾転反側、カーペットの硬い床は肩と腰の骨に直接密着するような感覚で、体から力が抜けてくれない。眠れない。嗚呼、と考えながら、天井を見つめ、どうなるのだろうと考える。製油所の爆発のことを考える。仙台の知人の事を考える。そして家族のことを考える……。眠れない、と身体を起こし、壁の電波時計を確認すると、時刻は一時間ばかり進んでいた。身体は余計に疲れたような重さで、胃のあたりからカップラーメンが化学反応を起こしたような気持ち悪い汁がせり上がってきそうな感覚を得る。眠れない。僕は結局自分の席に戻り、またパソコンに向かった。動かない電車と被害の続報で、どうしてこうなってしまうのだろうと苛立ちを覚える。どうにもならない。ここにいてできることは、何も無い。僕はふんぞり返ってソリティアをやりながら、ネットを見つめ、朝を迎えた。