「ダマセーノ・モンテイロの失われた首」アントニオ・タブッキ/白水社

ダマセーノ・モンテイロの失われた首

ダマセーノ・モンテイロの失われた首

★★★★★
大学生の時に読んだっきりの本。あの時は大学の図書館で借りたけれど、今回は手元に残したくて買いました。これと「供述によるとペレイラは……」を読んで素晴らしいと思ったのは懐かしい思い出として今なお覚えている。で、今回久しぶりに読んでみてやっぱりこの小説ってすごいよなと。村上春樹の言う壁と卵の話そのものだよ。ラストのドン・フェルナンドの一言は、我々が必ずわかっていなければならないたったひとつのことを指摘していて、どきりとする。それを書いちゃうとオチがわかっちゃうので書きませんが。
また、↓の箇所は読んでいて頭を殴られたような感じに。すっかり忘れていた。

私には拷問者の名前を記憶するという病的な習慣があるんです。どうしてだと思います? なぜなら、拷問は個人の責任で行う行為だからです。上官の命令に従ったという理由は許されません。多くの人がこの卑劣な言い訳を隠れみのにしてきました。それを理由にすることによって法的に守られてきたんです。わかりますか? グルントノルムの後ろの隠れているのです。