「子供たち怒る怒る怒る」佐藤友哉/新潮社

子供たち怒る怒る怒る (新潮文庫)

子供たち怒る怒る怒る (新潮文庫)


ちょっと信じられないくらいひどくてびっくりした。とはいえ、解説がひどすぎるくらいなので、小説のひどさは幾分薄らいだ感はあるが。金払ってるわけで、点数ナシってのも自分に腹が立つので半分つけといた。
正直なところ、表題作が発表されたときにはてなの中で結構評価してる人がいた気がするんで期待していたのだけれども、見事に裏切られた。こりゃないって。この本をほめちゃう人とは絶対に価値観が合わないので、本を薦めたりできないと思った。他人に薦めることなんて滅多にないんですけどね。

  • 「大洪水の小さな家」

最悪。いきなりペニスが勃起してるところから始まって、わけわからんうちに射精。ひとりで大満足、的な小説を本の一番頭に持ってこれる神経を疑う。短〜中編集なのに、一番ヘタクソなのもってきてどうするよ。

  • 「死体と、」

大洪水〜よりはかなり良い。けどマルケスかなんかに読んで感化されちゃったのかな?という感じなのはどうかと思ったけど。

  • 「慾望」

佐藤友哉の一番ダメなところが出てる。絶望を表層的に描写して、わかりやすい形である暴力として表現してるだけ。理由なき殺人で「異邦人」ひっぱりだすのはいいけれど、余計に陳腐化させてる。この人の小説に出てくる固有名詞は全部そういう効果を持ってる気がする。僕だけの印象かもしれないけれどさ。そしてそれを狙ってるんじゃないかとすら疑ってしまう。不信。

  • 「子供たち怒る怒る怒る」

尺があるだけまだましなのだけれども、わかりやすい絶望こと暴力のオンパレード。だからなんなの? と「慾望」と同じような感想。レイプやら部落差別やら、一見深刻なテーマに触っているように見えて、実は軽い扱いでびっくりする。

  • 「生まれてきてくれてありがとう!」

この本の中ではマシなほう。除雪のショベルカーって子ども巻き込むほどのものかなぁ。富山と北海道だと大きさが違うのかな。

  • 「リカちゃん人間」

マシなほう。まあ話の内容と流れは一緒だから読まなくてもいいくらいだが。
つまるところ、この本はトートロジーでしかない。ほとんどが虐げられた者(たち)の反逆の話なんだけれど、全部表層をなぞって終了なのにはびっくり。鏡家サーガのほうがよっぽど面白いと思うんだけれど。