「ルート225」藤野千夜/志村貴子 新潮社/講談社
漫画版の「ルート225」を読んであんまりスッキリしなかったので、原作も読んでみた。ついでなので感想は併記することにした。
基本的に小説原作の漫画なんてものはあんまり読んだことがなく、最近の記憶では勝田文の「しゃべれどもしゃべれども」が最後で、これは結構面白かったのだけれども、あくまで漫画として面白かったのであって小説がどうのこうのという話ではない。
で、「ルート225」の漫画を読んだ後に原作を読んでまず思ったことは、これは最良の書き手によっての漫画化であったのだなあということ。原作におけるエリの性格の悪さというよりもひねくれた感じは、志村貴子が今まで描いてきた人物たちと実に類似性があって、びっくりするくらい原作と漫画における違和感が存在しなかった。小説においては主人公であるからにして過剰なまでに多弁なエリちゃんであっても、漫画の中では紙幅が限られていることもあり、その言葉は摘まれている。にしても、その性格の再現性は高いのであるから、よほど特徴をつかんだのか、それとも書き手がシンクロしたのかのどちらかだろう。
原作からのアレンジ部分がまた秀逸。小説ではエリと弟のダイゴの二人の世界が延々と続くが、その閉塞した空気は保ちつつも外部の人間を意図的に早く二人の世界へ導入することで、物語のテンポを速めつつも結果としては流れがよくなっている。エビヅカへの仕返しのシーンもオリジナルだけれども、ここは志村貴子の真骨頂。むしろ原作になかったことに違和感すら覚えてしまったほどの名シーンだと思うし、心境変化の明示になっている。
ちなみにこの話はパラレルワールドものなのだが、SF的要素はあんまりないし期待してもいけない。話の着地点からして、単純に普通の小説としか言いようがない。「なぜ」パラレルワールドに迷い込んでしまったか、「どうして」こんな世界ができたのか、「どうすれば」戻れるのか。これらについてはエリちゃんたちは一応考えるものの、答えはないからだ。あくまでも精神的な変化を読み取ってほしい、ということらしい。いくらこういう小説なの、といってもこれでは片手落ちなきはする。
- 作者: 藤野千夜
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/12/22
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文体がちょっとアレというか、若作りしすぎて失敗してると思う。
- 作者: 志村貴子,藤野千夜
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