「光の海」小玉ユキ/小学館

光の海 (フラワーコミックス)

光の海 (フラワーコミックス)

なぜ、少女漫画の失恋というのは美しいのか。それはおそらく、恋をするという行為そのものが美しいと考えられているからであり、恋の終わりは儚く、切なく、美しくなければならない。終幕というものはそういうものだという期待があるからだ。これは定型詩なのだ。さて、「光の海」に収められているのは失恋の話がほとんどである。そして恋は人魚というものに象徴される。人間と人魚は異なる存在である。話の最後には、人魚は人間のあずかり知らぬ領域へと旅立ってしまう。それと同じように、主人公が経験した恋もまた、消え去っていく。その過程は、喪失であり別離であり、相手が人間であろうと人魚であろうと、その感覚は等しく訪れ、美しく表現される(つまり、必ず置き去りにされた者は成長するのだ)。泥水をすするようなみっともない失恋があったっていいじゃないか、とは思うのだが、作中の人魚は美しい海の中できわめて純粋に泳ぎ続けている。それを見ていると、まあ場違いなのだな、と理解する。まあ、この作品集の最後に収められている「水の国の住人」だけは喪失からの回復を描いているので、最後は救われるか。
適当感想でした。