「コダマの谷」入江亜季/エンターブレイン

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)

雰囲気漫画、と言ってしまえばそれまでなのであるが、この雰囲気の醸成というのも中々に難しいんだろうな、と思う。で、この漫画はその雰囲気作りに成功している。ただしそれは、「エマ」やらなんやらのように時代と舞台を現実的に設定せず、類型的にはファンタジーである世界に似非リアリズムをまとわせたことによる成功なんだろうと思う。このことは作者が後書きで言っているし、どこにもなかったはずのどこかにありそうな世界、を舞台にする、というのは入江亜季って人の作風なんだろうと思う。
お話の内容ですが、コダマの谷にある王立大学に首席入学したニール・ライダーの事情と王子アーサーの事情を絡ませながら、演劇のように繰り広げられる人間模様、といったところ。ああ、ウーナがとにかくかわいい、かわいすぎる。しかし、そんだけ。この漫画は結局のところ本当のことを核心的に描くことを放棄して、ぐるぐるぐるぐるとその周りを飛び回っているだけなので、なんだか物足りなさを抱えてしまう人もいるのではないだろうか。
というか、少女漫画的な読み方をしたほうが楽しめるのかも。