献血をする

前回はかなり時間がかかったので、今回こそは平均的なタイムで抜きたい!と遅漏で名を馳せた男が階級替えをして早漏選手権入賞を目論むかのような意気込みで臨んだところ、出るわ出るわ(血が)。これは相当に速いぜ! とほくそ笑んでいたところ、針から管へと血が伝っていく感覚が、次第にレッドゾーンに突入していくのがわかり(VTECに切り替わるような感覚。乗ったことないけど)、それと同時に意識が体から遠のいていくのがはっきりとわかった(意識は遠のきつつあるのに、自分から何かが離れていくということはなぜだか明確に悟ることができた)。それを察したのか、泉ピン子のようなハイテンションな看護士のおばさんが急に僕を心配し始め、「大丈夫け? 大丈夫け?」と訊いてくるので、僕は「オレはまだオレの限界なんか見ちゃいねえぜ!」とばかりに「大丈夫です!」と応えるも、その声は弱弱しかった。「大丈夫です! 大丈夫スミダ! 大丈夫アル! テーハミング!ドドンガドンドン!」僕は必死になって応え続けながら、ピン子が「あとちょっとやわー」と言うのを聞き、右手に収められたスポンジをぐっと握り締める。そして400ml、僕は全速力で駆け抜けた。まるで脳内麻薬によって一気にトリップしたような感覚が体中を駆け巡っていた。F1のピットスタッフのように、急いで僕の体勢を変えさせ、「しばらく寝とられれば大丈夫やから」と言った。僕は目を瞑ったが、フィルムの貼られた献血車の窓から見える青空に浮かぶ雲が時の流れに伴いながら漂っているのを見つけると(なげえよ)、僕は走り抜けたあの五分ほどを思いながら、ため息を吐いた。「ああ、短い人生だった……」と。そしてピン子は笑いながら、言った。「あんたもう献血やらん方がええわ」
てか、今なお頭がぽーっとしているので、実は結構やばいのかもしれない。