「チャタレイ夫人の恋人」D・H・ロレンス/新潮社

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

なんだこのエロ小説は! としばらく読み進めてから思ったものの、これは至極まっとうに人間の自然な姿について描こうとした小説なのだと気づかされる。気づかされる、というか、そう思わざるを得ないのだ。まあ、訳語の調子のせいで、くすりと笑わされる箇所も多いが、骨の部分は一本筋が通っているのだ。人間は精神生活のみを重視し、肉体を軽視してきたが、根本的な部分では人間は動物であり、肉体こそを重んじるべきであって、それが自然な姿なのだ、と。間違ってる部分もあるだろうが、大体そんな感じのことを言っている。これは当時の時代状況が反映されているのであろうから、当然ながらそのまま現在に当てはめて考えるわけにはいかない。しかし、コニーやメラーズが嫌う、ただ生活のために、そのための金を稼ぐために生きている人々への批判や、そういった社会のあり方への批判はいまだに何がしかの響くものを持っているはずだ。

おれはおまえをきんたまと心の両方で愛している (pp.391)

山川純一先生の作品かと思いました。