「パルプ」チャールズ・ブコウスキー/新潮社

パルプ (新潮文庫)

パルプ (新潮文庫)

ハードボイルドものなのだが、探偵役の主人公が全くと言っていいほどスマートじゃないしタフでもない。ただし、しぶとい。それをタフと言い換えることは不可能ではないが、ハードボイルド的なタフさとは別種のもので、言うなれば往生際の悪さに類するものだ。でもまあ他の探偵が時折呟く台詞と同じく、ビレーンの吐く言葉には真実味とというものが詰まっているように思えてくる。格好悪くたっていいじゃない、いいかげんでもいいじゃない、上手くいかないことばっかりだけれど、それでもなんとかやってるよ、といった感じのビレーンのダメダメっぷりには親しみすら覚える。なんだこれと思いながら、くすりと笑って、ううんと考えさせられて、ああ面白かったで終わることのできるよい本だと思う。文字通り「パルプ」な小説だが、読み捨ての小説にはない力を持っている。まあそんな本ですよ、と。