ぬるぽ

どこにでもある。好ましいものも、嫌らしいものも、そこかしこにある。この眼に見えるもの全ては現実と妄想のアマルガムであり、砂糖菓子のごとく甘い側面と血反吐の持つ金属の味がするような苦い側面を併せ持っている。徐々に、段々と、少しずつ、その甘いヴィジョンを幻想なのであるという認識の支配下におけるようにならなければ、生きていくことが辛くなってしまう。不条理や不合理が跳梁するこの世界こそは現実の一つであり、心地よく精神や心を満たしてくれる甘ったるい幻想の世界もまた現実の一つだ。ある人は片眼をつむり、残った一方の眼から見える世界を愛する。それが甘いのか、痺れるような苦さに満たされているのかは誰も知らない。けれども、大半の人は両眼で世界を見ている。そして、何がどこからやってきて、どこに属しているのかを見極めようとしている。世界を歩く人々は強い。つまづいて転んでいる私は彼らを批判する術を持たない。ただただ幼児のごとく、我を通そうとすることしかできない。二つの絵が重なり合ったこの場所で、いつまでも眠ってしまいたいような感覚に囚われながら、今日も私は呼吸している。果たして吸っているものは、どちらの世界からやってきたのだろうか。……それとも、三番目の世界からやってきたのだろうか。