「はるの/よるの/ようだ」

村上かつらで一番すごい作品って実はデビュー作ではなかろうか、と思った。あの終わりはすごい。若くなくちゃ描けないだろうし、何かを知ってしまうと描けなくなるように思う。機を逸するといつの間にか失っていることになってしまう「何か」を掴んだ人間にしか描けないのではないだろうか。しかも、それを失いつつあるということに、人は気付いている。気付きやすいものだが、上手く言葉にはできないものなのだ。そこから発生したある種のひたむきさが作者にあのモノローグを書かせ、最後に主人公から「…かっこよかった……!!」と言わせることができたのだ。最初で最後、一度きりしか使えない、とっておきの手法なのではないだろうか。
久々に短編を読んでぶるっときた。必読です。作品単体で感想書きたくなるくらい良いです。